リトアニア

それにしてもなぜこれほどの親日感があるのか、日本文化に対する熱いまなざしや憧憬は半端ではありません。

 

自己流ながら生け花や,日本庭園、墨絵を楽しんだり、日本の伝統武道を修練したり、また老若男女が俳句を作って楽しんだりしています。

大統領や政府要人、国会議員,経済界トップのほとんどから「日本は私たちの夢です、あこがれです」、「日本はお手本」といわれます。

 

何を企画しても大変な人気なので外交団の間からその秘訣を問われたこともありました。

 

本当になぜなのか、実はそこにはきちんとした理由があったのです。

 

リトアニアの皆さんが挙げる理由は世代により多少異なり、また日本の経済力、技術力が素晴らしいからという無難な回答もありますが、驚いたことに100年以上も前の日露戦争での日本の勝利を挙げる人が多いことです。

 

今の日本人にはぴんと来ない話だと思います。当時のヨーロッパ諸国にとっては遙か彼方のアジアの小国日本が強大なロシア帝国との戦争に勝ったことは相当のインパクトを持って受け止められたようでした。

 

この傾向はバルト地域を含むポーランドや北欧諸国に見られるようですが、特にリトアニアでは長い間ロシア帝国の圧政に苦しんでいた若い愛国者達に大きな勇気と希望を与えたようです。

 

なかでも愛国心に燃えるステポーナス・カイリース青年は日本こそリトアニアがめざす目標との思いから、当時日本関係資料が整っていたサンクト・ペテルスブルグからロシア語の資料を取り寄せリトアニア語版の小冊子3冊に書き直し出版したのです。その小冊子は今もビリニュスの国立科学アカデミー図書館に保存されています。

 

そういうリトアニア語の書物があったからこそ「日本」に対する特別な思いがたとえ細々であっても100年という歴史の荒波を乗り越えてリトアニアの人々の心に残ったのだと思います。

最近ノンフィクション作家の平野久美子氏がこの「日本論」を紹介する著書『坂の上のヤポーニヤ』を出版しました。当時のリトアニアにとって日本はそれこそ“坂の上の雲”だったのでしょう。

 

そして次に挙げられた理由は、日本はナチスのユダヤ人迫害から在欧のユダヤ人を助けた杉原千畝領事代理の国だからということです。

 

当時リトアニアの首都であったカウナス市内には杉原領事代理が執務し居住していた建物が残っております。

 

11年前から現地の非営利団体・杉原財団がカウナス市やカウナス大学の支援をえながら杉原ハウス(仮称)として運営しています。

 

建物は日本領事館の内装を残した展示場とカウナス大学日本学センターからなっておりますが、展示場は我が国政府の支援もあり充実した内容となっております。

 

日本からの訪問者はもちろん、世界各地からユダヤ系の人々が訪問し、カウナス市の有力な観光誘致スポットとなっております。

 

日本に対する親日感情の根拠となる3番目の理由は、リトアニア独立回復直後に日本政府が実施した技術協力や文化無償協力への深い感謝の気持ちです。

 

特にソ連撤退後の新生リトアニアにとって音楽アカデミーでの楽器や、国立美術館,コンサートホールなどの視聴覚装備には手が回らなかった状況でしたので、文化無償協力による日本からの支援は大きな効果をもたらしました。

 

先の歴代臨時大使の賢明な選択に感謝しなくてはなりません。幸運にも私はその果実の恩恵に浴したわけですが、それほど日本の支援が多くの国民から喜ばれ感謝されているという点を私たち日本人は知っておかなければなりません。

 

もうひとつ忘れてはならない歴史的事実を指摘する人々もいます。先の大戦後ソ連のリトアニア占領がはじまると同時に大量のリトアニア人がシベリアに追放されましたが、生死をさまよっていたリトアニア人を助けたのがシベリア抑留中の日本人だったということです。

 

私も生存者から話を聞く機会がありましたが、日本人の勇気から生きる力を得たと語っていました。

 

今でも多くの人々がシベリア追放の暗い過去を抱えている現実を見れば、シベリアでの日本人との心の絆が日本のイメージ形成に資していると考えても不自然ではありません。

 

 

このような親日的なリトアニアにとって昨年の東北大震災は信じられないほどのショックで受け止められました。

 

震災を知った多くの人々は大使館の前に花束を置き沢山のローソクに灯がともされました。

 

何かしたいがどうしたらいいのかという電話が殺到しました。

 

お見舞いの言葉や千羽鶴の束が届けられ、義捐金運動、チャリティコンサート,ミサなどが各地で開催されました。

 

なかにはリトアニアへの移住を勧める意見も聞かれ、優秀な日本人をぜひ受け入れたいと真剣に提案する人々にも会いましたが、リトアニア市民にとっても他人ごとではない気持ちが強く伝わりました。

 

現在リトアニアではエストニア、ラトビアと共に原発建設計画を進めていますが、震災後の福島原発事故はむしろ日本人の技術力の高さを再評価させることとになり、日本企業(日立・GE社)と真剣な交渉を続けております。

 

2月末クビリウス首相は日本政府からエンドースを取り付けることを目的として訪日し首脳会談を行いました。

 

原発建設はリトアニアにとりエネルギー安全保障の最重要案件であり早い時期の契約成立を目指しています。そうなれば確かな背景に裏付けられたリトアニアの日本に対する熱い思いも日本に伝わり両国関係は急速に発展していくものと信じております。

そしてこれからは日本とリトアニア両国が情緒的な関係から戦略的互恵関係に展開しながら、共に信頼するパートナーとして世界の平和と安定のために貢献することを強く願うもので、またそれは両国が描く将来像であると確信します。(3月26日寄稿) 

 

※本文に記載している内容は

個人的見解に基づくものです。

 

元駐リトアニア日本国大使 明石 美代子

リトアニアからの熱い思い

https://www.kasumigasekikai.or.jp/12-04-02/

 

 

 

 

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