ウィスキー

日本が世界5大ウイスキーに入った衝撃的理由

世界的に人気を集めているジャパニーズウイスキー。スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンと並び、世界5大ウイスキーとも称されますが、かつては長い不遇の時代がありました。

 

ジャパニーズウイスキーはなぜ人気になったのか。新著『人生を豊かにしたい人のためのウイスキー』を上梓した、ウイスキー文化研究所代表でウイスキー評論家の土屋守氏が解説します。

 

1929年4月1日に日本初の本格国産ウイスキー「サントリーウヰスキー(通称“白札”)」が発売されたことを記念して、2021年4月1日から「ジャパニーズウイスキーの日」が、正式に記念日として登録されました。

 

わずか100年足らずで、世界から高い評価を受けているジャパニーズウイスキーですが、長い冬の時代がありました。

 

1991年のバブル崩壊をきっかけに、日本は長い不況に突入しますが、日本のウイスキー産業はそれよりも早く、落ち込んでいます。

 

1983年に約38万キロリットルを記録したのを最後に国内のウイスキー消費量は右肩下がりになり、その状況はおよそ25年続きました。ジャパニーズウイスキーの歴史において最も暗く、厳しい時代です。

 

だからといってウイスキーの製造を完全にやめてしまえば、5年後、10年後、20年後の原酒がなくなってしまいます。

 

サントリーもニッカウヰスキーもキリンも、ウイスキーの生産量をぎりぎりまで減らしてなんとか耐えていました。

 

そんな中、明るいニュースもありました。2001年に開催されたウイスキーの品評会「ベスト・オブ・ザ・ベスト」において、ニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」が総合1位を、サントリーの「響21年」が2位を獲得したのです。

 

スコッチ、アメリカン、アイリッシュなど各国のウイスキーを抑え、ジャパニーズウイスキーが「世界一おいしい」と認められた瞬間でした。

 

ベスト・オブ・ザ・ベストはその後、ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)と名称を変え、ウイスキーの権威ある品評会の1つとなっています。

 

これを皮切りに、ジャパニーズウイスキーは海外の品評会で次々に受賞。ジャパニーズウイスキーの知名度は国内外で少しずつ高まっていきます。

 

また、1990年代半ばから、シングルモルトを好む層が少しずつ増え、都内を中心にシングルモルトを提供するモルトバーも数多く登場しました。

 

ところで、ジャパニーズウイスキーは世界の5大ウイスキーの1つとされていますが、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンに比べると歴史が浅いのは明らかです。

 

2001年のベスト・オブ・ザ・ベストでシングルカスク余市10年が総合1位を獲ってようやくジャパニーズウイスキーの存在を知り、「日本でもウイスキーがつくられているのか!」と驚いた海外のウイスキー関係者も大勢いたはずです。

 

ではいったい、誰が、いつ、ジャパニーズウイスキーを「5大ウイスキーの1つ」というようになったのでしょうか。

 

実はこれ、謎なのです。私がウイスキー関連の書籍をはじめて上梓したのは1992年です(『スコッチ・モルト・ウィスキー』新潮社/共著)。この本で私は「ジャパニーズウイスキーは5大ウイスキーの1つ」という表現を使っています。

 

ただし、これは私の考案ではありませんから、おそらく、このとき参考にした文献に「5大ウイスキー」という記述があったのでしょう。

 

そう考えると、1970年代から1980年代には、5大ウイスキーという呼称がすでに使われていたと考えられます。

 

1960年代、サントリーやニッカウヰスキーはウイスキーを海外へ輸出していました。したがって、海外にもジャパニーズウイスキーを知る人はいたのでしょう。

 

だからといって、スコッチやアイリッシュの関係者たちが、ジャパニーズウイスキーを自分たちのウイスキーに並ぶものと認識していたとは到底思えません。

 

そう考えると、「世界の5大ウイスキーの1つ」というジャパニーズウイスキーの肩書きは、当初は“自称”だった可能性が非常に高いのです。

 

しかしながら今、ジャパニーズウイスキーが世界5大ウイスキーの1つであることに疑念を呈す人はいないでしょう。

 

ウイスキーファンならご存じでしょうが、台湾にカバランという蒸留所があります。カバラン蒸留所は、2006年にオープンした台湾初の蒸留所です。

 

2008年に初のシングルモルトをリリースするとその実力が高く評価され、以来、世界の蒸留酒の品評会で多くの賞を受賞しています。

 

そのカバラン蒸留所が以前、「台湾のウイスキーを世界の6大ウイスキーとしたい」といっていました。

 

はじまりこそ“自称”だったかもしれませんが、ジャパニーズウイスキーが5大ウイスキーの1つであることは、ウイスキー業界ではもはや常識となっているのです。

 

シングルモルトのシェア拡大や、世界的な品評会でシングルカスク余市10年と響21年が受賞するなどの明るいニュースがありつつも、ウイスキー消費量の下降に歯止めはかからず、2008年まで下がり続けました。

 

底を打った2008年の消費量は7万4000キロリットル。1983年のピーク時のおよそ5分の1にまで減っていました。

 

しかし、ウイスキーの消費量は2009年から上昇に転じます。長いウイスキー不況に終止符を打ったのは、ハイボールブームでした。

 

2008年ころから、サントリーは角瓶をソーダで割る「角ハイボール」、通称「角ハイ」の広告を展開。「ウイスキーが、お好きでしょ」の名曲をBGMに、女性店主が営むバーの様子を描いたテレビCMは大いに好評を博しました。

 

そして、若者を中心にハイボールが大ブームとなり、そのおかげで消費量が上昇に転じたのです。

 

ハイボール人気は10年以上経った今も継続中で、スーパーやコンビニではハイボール缶が並び、ご当地ハイボールも誕生しています。

 

角ハイによって火がついたハイボールブームのおかげで、1983年のピーク時には遠くおよばないとはいえ、国内のウイスキー消費量は少しずつ盛り返していきました。

 

そこへ、さらなる追い風が吹きます。2014年9月から、NHKの朝の連続テレビ小説『マッサン』の放送がスタートしたのです。

 

『マッサン』は、ウイスキーづくりの夢を抱くマッサンこと亀山政春(玉山鉄二)と、その妻エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)の生涯を描いた人情喜劇。ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝と妻リタがモデルとなっています。

 

連続テレビ小説において、男性が主演の作品はかなり珍しいそうです。また、ヒロインに外国人が起用されるのもはじめてとのこと。

 

かなり異例の作品だったといえますが、全150回の平均視聴率は、2013年放送の『あまちゃん』の平均視聴率20.6%を超える21.1%を記録しました。

 

実は、私は『マッサン』のウイスキーの時代考証を担当させていただき、脚本から読んでいました。それでも、毎朝の放送が楽しみでなりませんでした。

 

ウイスキーづくりに情熱を注ぐマッサンと、数々の困難が降りかかっても太陽のようにほがらかなエリー。2人の生き様に感動を覚えた方も多いのではないでしょうか。

 

『マッサン』をきっかけにウイスキーに興味を持った方も多かったようで、2015年には、北海道の余市蒸溜所に年間90万人もの観光客が足を運んだそうです。

 

ドラマには鳥井信治郎をモデルとした“鴨居の大将”(堤真一)も登場しており、そのつながりで、サントリーの山崎蒸溜所や白州蒸溜所にも多くの観光客が訪れたと聞いています。

 

2009年以降、国内のウイスキー消費量は順調に回復していきました。また、ウイスキーの輸出も着実に増えていきました。

 

ウイスキーの輸出金額で見ると、2013年は39億8000万円(対前年比160・7%)、2014年は58億5000万円(同147・0%)、2015年は103億7800万円(同177・4%)と、対前年比で2桁の伸びを見せています(国税庁「酒類の輸出動向について」より)。

 

この勢いは2020年まで続いており、なんと清酒を抜いて国産酒類のトップに躍り出ました。その金額は約271億円にもなります。ジャパニーズウイスキーは今、世界中で引っぱりダコなのです。

 

ウイスキーの輸出増の背景にあるのは、言うまでもなく、ジャパニーズウイスキーの品質の高さです。ジャパニーズウイスキーは今や世界的な酒類品評会の上位の常連となっており、オークションに出せば大変な高値で取引されます。

 

サントリーの創業者・鳥井信治郎と、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝は、スコッチウイスキーをはじめとする世界のウイスキーに憧れて国産ウイスキーの製造に乗り出し、以来、その背中をずっと追いかけてきました。

 

そして今、ジャパニーズは世界が憧れるウイスキーとなったのです。

 

 

東洋経済

https://toyokeizai.net/articles/-/419858?page=2

 

 

 

 

 

 

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