Windowsよりも先進的だった国産OS「TRON(トロン)」
TRONプロジェクトは1983年頃、坂村健教授(当時は東京大学助手)が提唱し、開始された日本独自のOS開発プロジェクトです。
TRONとは「The Real-Time Operating System Nucleus」の略です。
日本語でいうと「リアルタイム(実時間)で機器を作動させるOSの中心部分」という意味です。
TRONプロジェクトの出発点は、坂村教授の電球から人工衛星まであらゆるモノにコンピュータが入り込み、ネットワークでつながると予想した発想です。
それぞれの機器に組み込まれたコンピュータの動きを統一するために、OSを標準化させるというビジョンを提示しました。
それがTRONプロジェクトの出発点となったのです。
このような考えは、現在では「ユビキタス」と呼ばれています。
また、その仕組みは「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)と呼ばれて注目されています。
そんな矢先、1989年にアメリカからスーパー301条に引っかかるとして圧力がかかりました。
1989年4月21にアメリカ合衆国通商代表部(USTR)が発行した、「外国貿易障壁報告書」にTRONが名指しで記載されました。
1980年代後半は、日本の経済力が急激に伸びた時期で、アメリカとの貿易摩擦問題が発生していました。
そうした時代背景での出来事でした。
この動きにトロン協会は、USTRに対して文書による抗議を行いました。
その結果、1年ほどしてTRONは制裁対象から外れますが、メーカー100社近くがTRONから手を引きました。
厄介なゴタゴタに関わりたくなかったということでしょう。
結局、実際に学校教育で導入されたのは、PC-9801をはじめとするMS-DOS搭載のパソコンで、TRONは排除されてしまいました。
TRONがパソコンOSとして普及するチャンスは潰されてしまいました。
しかし、6つのプロジェクトの中で「I-TRON」は現在でも生き残って発展しています。
I-TRONは、「家電機器」「ロボット」などに組み込むコンピュータ用のOSでした。
トロンフォーラムの2018年度調査報告によると、「組込みシステムに組み込んだOSのAPI」でTRON系OSがシェア60%を占めたらしいです。
坂村教授が望んだ「どこでもコンピュータ」の実現がいよいよ近づいてきました。
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