アンドレ・マルロー フランス文化大臣(ドゴール政権)、作家、冒険家(1901~1976)
「日本は太平洋戦争に敗れはしたが、その代わり何ものにもかえ難いものを得た。それは世界のどんな国も真似のできない特別攻撃隊である。スターリン主義者たちにせよ、ナチ党員たちにせよ、結局は権力を手に入れるための行動だった。日本の特攻隊員たちはファナチックだったろうか。断じて違う。
彼らには権勢欲とか名誉欲などはかけらもなかった。祖国を憂い貴い熱情があるだけだった。代償を求めない純粋な行為、そこにこそ真の偉大さがあり、逆上と紙一重のファナチズムとは根本的に異質である。人間はいつでも偉大さへの思考を失ってはならないのだ」
戦後にフランスの大臣として初めて日本を訪れた時、私はそのことを特に陛下に申し上げておいた。フランスはデカルトを生んだ合理主義の国である。フランス人の中には、特別攻撃隊の出撃機数と戦果を比較して、こんなに少ない撃沈数なのになぜ若い命をと、疑問を抱くものもいる。
そういう人たちに、私はいつも言っている。”母や姉や妻の生命が危険にさらされている時、自分がやられると承知で暴漢に立ち向かう息子の、弟の、夫の道である。愛する者が殺められるのを黙って見過ごせるものだろうか?” と。
私は、祖国と家族を想う一念から恐怖も生への執着も全てを乗り越えて、潔く敵艦に体当たりをした特別攻撃隊の精神と行為の中に、男の崇高な美学を見るのである」
「特攻 - 若者たちへの鎮魂歌」PHP研究所
「日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか」黄文雄、徳間文庫