第2次世界大戦終結60周年の2005年、今上天皇と皇后陛下がサイパン島を訪問することになりました。それは、戦没者を慰霊したいという以前からの今上天皇の希望でした。
サイパン島は当時、激戦地の1つで、日本兵、残留日本人が55.000人以上、アメリカ兵が3.500人以上、現地のチャモロ人が900人以上亡くなっています。アメリカ兵からの投降勧告に従わずに崖から海に飛び込んで自決した人も多いところです。
ところがその訪問に対して、サイパン在住の韓国人から反対の意見が出ました。「過去に日本が占領した地域で軍国主義を追慕するため」というのがその理由です。
サイパン韓国人会会長のキム・スンベク氏は、「訪問を完全に防ぎたかったが、現実的に不可能なので代替案を探した」ということで、事務所の前に、「太平洋 で犠牲になった韓国人に謝罪して慰霊祭を行なえ」という激烈な横断幕を掲げ、サイパン在住韓国人によるデモ隊が出てくるという噂まで流れました。
ところがこの反対運動に猛烈に抗議する現地の人たちが現れました。その代表が、ジョーテン・エンタープライズ社という、現地でショッピングセンター、車のディーラー、ホテル、ベーカリー、保険業などを多角的に経営するジョーテン社長のご夫人、ダイダイさんです。
現人神たる陛下が島においで下さるのに、韓国人はなんと失礼なことをするのかというのがその理由です。彼女は、チャモロとカロライナの先住民に対して、韓国の企業・製品をボイコットするように呼びかけました。
その運動は地元紙までも巻き込んでまたたくまに広がり、サイパン韓国人会は横断幕を下さざるを得ませんでした。しかも当日には、「サイパン韓国人会は、天皇夫妻を歓迎する」という声明をしぶしぶ発表することになりました。
天皇皇后両陛下は、予定通りにスーサイドクリフ、中部太平洋戦没者の碑、チャモロ人など現地人900人を慰霊するマリアナ記念碑、米兵約5.000人を慰 霊する第二次世界大戦慰霊碑などを慰霊して回りましたが、最後に発表にはなかった、沖縄の塔と、韓国平和記念塔にも立ち寄って拝礼されました。