「イカ釣りロボ」で漁師を救え! 函館のグローバル企業「東和電機製作所」は世界シェア7割。
この50年で4分の1に減った日本の漁業就業者。人手不足を補っているのは、実はロボットだという。北海道の羅臼港では、イカ釣り船のほとんどが「イカ釣りロボ」を搭載している。1艘分のシステムで1200万円するが、いまやこれが欠かせないそうだ。
2014年12月11日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、このイカ釣り機で国内シェアトップ、世界シェア7割を誇る東和電機製作所を紹介した。「漁師の言うことを真剣に製品として提案していこう」と改良を重ね、16世代目となる現在のイカ釣りロボは、世界15の国と地域に輸出されている。
グローバルに展開する東和電機製作所だが、実は北海道函館市にある町工場だ。従業員55人で年商30億円。他社に先駆け、疑似餌を小魚に見せる「シャクリ」をコンピュータ制御で行うイカ釣りロボを開発した。
開発の中心となり、60以上の特許を取得してきた浜出雄一社長だ。会社は1963年、浜出社長の父親が創業。造船所の下請けとして配電盤などを作っていたが、あるとき親戚の漁師から「イカ釣り機を作って欲しい」と頼まれたのがきっかけだった。
1968年に手巻き式のイカ釣り機を発売、次いでモーター式も大ヒットし、造船不況を横目にトップメーカーとなった。それにあぐらをかいて漁師の要求を軽視していたところ、松下電器など続々とライバルが参入し、80年代にはトップの座を失う。
当時開発部長だった浜出氏はコンピュータの自動制御に可能性を見出し、ゼロから勉強する一方、全国の漁師のもとに通い、生の声を徹底的に聞きまわった。試行錯誤の末、1984年に全自動イカ釣り機を発売するとライバルは撤退。トップの座を奪還した。
マグロ釣り名人の元に5年間通って開発した「自動マグロ一本釣り機」は、青森県大間のマグロ漁師の9割が使っている。手で釣っていた時は4時間かかっていたものが半分になり、漁師のひとりは、「この機械があるから楽。最高に楽です」と満面の笑みを浮かべた。
東和電機で青森・三沢港を担当する小野寺晃英さんは、漁を終えた漁船を訊ねるのが日課だ。「私たちはイカや魚を獲ることはできない。漁師から情報をもらって、それが新しい機械の技術になっていく」と語る。
取材時に漁師を苦しめていたのが、重油価格の高騰。船を動かすだけでなく、イカをおびき寄せる漁火にも重油を使う。そこで東和電機が研究しているのが「LED集魚灯」。従来のランプに比べて燃料代が大幅に削減でき、すでにサンマ漁では大活躍している。
しかしイカはかなり目が良く、開発は難航しているのが現状だ。自社の試験船で実際に漁をしつつ、LEDのトップメーカー日亜化学工業と組んで研究を進めている。
浜出社長は日本の漁業について、海外からの輸入に頼る部分が大きすぎる点に危機感を募らせる。番組MCの村上龍は、「でも浜出さんの機械は、それを多少は救うものですよね」と言うと、「だと思います。そういう気持ちでやっています」と誠実そうなまなざしで答えた。
日本で漁師が少なくなれば商売に影響するが、世界シェアトップの座にいる東和電機は日本以外にも市場を持っている。それでも浜出さんは、今後も日本の漁師のために改良や開発を続けていくのだろうと感じた。
キャリコネニュース
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