夜光塗料に関するコア技術で 世界に通用する製品を生み出し続ける。
全世界の夜光塗料市場において、約 80%のシェア を誇る根本特殊化学株式会社。 同社の創立は太平洋戦争開始の 1941 年 12 月 8 日。
創業者の根本謙三氏は開戦の報を聞き、戦時には 夜光の需要が伸びると考え、夜光塗料を販売する会社 を設立。当時はもっぱら軍需用途に利用された。
さらに戦中、インドの革命家チャンドラ・ボース氏が亡命 先のドイツから潜水艦「Uボート」で来日した際に積んでいた夜光材料が戦後、港の倉庫に眠っており、それらをすべて買い占めた。
これが後の夜光時計用夜光 塗料の原料となり、同社の発展につながった。
現在では、夜光塗料事業が持つ3つのコア技術「蛍 光体製造技術」「放射線取扱技術」「文字盤印刷技術」 を生かしながら、「セーフティ」「セキュリティ」「ヘルス」の分野で最先端技術を生み出し続けている。
逆の発想で従来の素材に注目。 世界を席巻した「N夜光(ルミノーバ®)」。
同社の代表的製品「N夜光(ルミノーバ)」。その開発には大きな決断があった。
従来、国内外に大きな市場を持っていた同社の夜光 塗料だが、「残光時間が短く、微量ではありますが放 射性物質の添加を必要とするという問題がありまし た」と代表取締役会長の根本郁芳さん。
「人と地球のための化学」を標榜する同社は、この 2つの問題を解決するために、新素材の開発に着手。
蛍光灯やテレビに使用される蛍光体など、もともとあ る素材を見直し、数千にも及ぶさまざまな組み合わせ を試みることで、1993 年、「N夜光(ルミノーバ)」 の開発に成功した。
「N夜光(ルミノーバ)は、1放射性物質や有害物 質を一切含まない。2長時間発光する。3残光時間、 輝度ともに従来の蓄光顔料比 10 倍。4励起する光の 波長範囲が広い。
5照射する光が強ければ強いほどよ く光る。6耐光性に優れ屋外利用も可能。7化学的安 定性が高く環境に適応できる、といった特徴で、たち まち世界を席巻。
時計をはじめ、電子機器、家電、フ ァッション、アウトドア用品など日常のあらゆるとこ ろで使用されているほか、各国で避難誘導標識の規格 に採用されるなど、その用途を拡大している。
この発明で、同社は 1994 年に「日経優秀製品・サービス賞」を、1996 年に「大河内記念技術賞」を受賞。
さらに 2005 年 4 月 18 日の「発明の日」には、 「特許活用優良企業」として、経済産業大臣から表彰を受けた。
将来の係争までも視野に入れた 「N夜光(ルミノーバ)」の知財戦略。
「N夜光(ルミノーバ)」は製造技術の発明ではなく 新素材の発見であること、組成がわかると比較的簡単 に製造できること、同社の主力事業である夜光塗料技 術を守る必要があることなどの理由から、特許の出願 は戦略的に行った。
1請求範囲の拡大を図るために実施例を補強し、国 内優先権を主張。2請求内容は侵害品を特定しやすい ように記述。3加工技術、応用・用途はできるだけ明 細書に開示。
4海外市場を考慮し、欧州、米国、中国 等多くの国で出願。5将来に備え特許の一部を分割し て残す。6国内では早期審査を請求。
同時に将来の知放射性物質を含まず、一晩中発光する蓄光性夜光顔料「N 夜光(ル ミノーバ)」、「ライセンス付与」によって、 特許侵害企業を巻き込む。
国内外で幾度も特許侵害を受けた経験を持つ同社。
特に中 国は、特許に対する意識の違いに苦慮してきたという。
「特 許を侵害している会社が同社の中国・大連工場を訪れて、改 良の相談をしてきたこともあります」と根本さんは苦笑する。
特許侵害の際には必ず裁判で戦ってきた同社。米国企業と 争った際には、相手側の米国企業に世界特許ライセンスを付
夜光塗料に関するコア技術で 世界に通用する製品を生み出し続ける
全世界の夜光塗料市場において、約 80%のシェア を誇る根本特殊化学株式会社。
同社の創立は、太平洋戦争開始の 1941 年 12 月 8 日。創業者の根本謙三氏は開戦の報を聞き、戦時には 夜光の需要が伸びると考え、夜光塗料を販売する会社 を設立。
当時はもっぱら軍需用途に利用された。さら に戦中、インドの革命家チャンドラ・ボース氏が亡命 先のドイツから潜水艦「Uボート」で来日した際に積 んでいた夜光材料が戦後、港の倉庫に眠っており、そ れらをすべて買い占めた。
これが後の夜光時計用夜光 塗料の原料となり、同社の発展につながった。 現在では、夜光塗料事業が持つ3つのコア技術「蛍 光体製造技術」「放射線取扱技術」「文字盤印刷技術」 を生かしながら、「セーフティ」「セキュリティ」「ヘルス」の分野で最先端技術を生み出し続けている。
逆の発想で従来の素材に注目。 世界を席巻した「N夜光(ルミノーバ®)」。
同社の代表的製品「N夜光(ルミノーバ)」。その開 発には大きな決断があった。
従来、国内外に大きな市場を持っていた同社の夜光 塗料だが、「残光時間が短く、微量ではありますが放 射性物質の添加を必要とするという問題がありまし た」と代表取締役会長の根本郁芳さん。
「人と地球のための化学」を標榜する同社は、この 2つの問題を解決するために、新素材の開発に着手。 蛍光灯やテレビに使用される蛍光体など、もともとあ る素材を見直し、数千にも及ぶさまざまな組み合わせ を試みることで、1993 年、「N夜光(ルミノーバ)」 の開発に成功した。
「N夜光(ルミノーバ)は、1放射性物質や有害物 質を一切含まない。2長時間発光する。3残光時間、 輝度ともに従来の蓄光顔料比 10 倍。4励起する光の 波長範囲が広い。5照射する光が強ければ強いほどよ く光る。
6耐光性に優れ屋外利用も可能。7化学的安 定性が高く環境に適応できる、といった特徴で、たち まち世界を席巻。
時計をはじめ、電子機器、家電、フ ァッション、アウトドア用品など日常のあらゆるとこ ろで使用されているほか、各国で避難誘導標識の規格 に採用されるなど、その用途を拡大している。
この発明で、同社は 1994 年に「日経優秀製品・サ
ガラスやプラスチック、印刷、繊維など、あらゆるものに使用が可能。 特に世界中の避難誘導分野での拡大が著しい
財係争、権利行使等を視野に、知財保険にも加入した。
厳格な報酬制度と 特許に強い社内体制を構築
同社グループの知的財産関連の管理を担うのは、知 財室だ。担当社員には顧問弁理士による「知財マイン ドスキルの習得」「係争解決実務の習得」や海外担当 顧問による「海外実務の習得」などの研修が継続的に 行われ、特許出願の明細書を書けるまでのスキルを持 っているという。
その上で、出願時には顧問弁理士、 権利行使係争では顧問弁護士、海外での案件は海外 担当顧問や海外代理人の協力を仰いでいる。 特許アイデアの創出にも積極的だ。
「基本的に知財 権に相当する発明は会社に譲渡することになっていま すが、その際の発明対価の支払いを職務発明規定に定 めており、出願時、登録時、そして利益確定時にそれ ぞれ支払われます」と、取締役社長の松沢隆嗣さん。
そのほかにも、改善・提案に対する報償制度、技術 開発・品質向上のための研究成果発表会など、社員の 開発意欲を高める施策を数多く行っている。
2010 年8月には粉体色が白い夜光塗料の開発に成 功したという同社。夜光塗料の新しいグローバルスタ ンダードが生まれる日も近い。
知的財産事例
https://www.tokyo-cci.or.jp/sansei/chizai100/nemoto.pdf